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見た目が随分と変わったけど声が間違いなく桜の中で私に家族について教えてくれたあの人!
こんな偶然はあるのだろうか?
壇上にいる岩城先生は全生徒に目を向けていたから私にはきっと気が付いていない。
だから式が終わったら絶対に話しかける。
家族になれたこと、幸せなこと、もう伝えたいことがいっぱいあるんだから。
「最後になりますが、私の最初の授業では作文を書いてもらいます。家族とは何か、です」
優しく笑いながら私は岩城先生としっかり目が合った。
家族とは何か、この作文は全生徒の中で一番いい作文が書ける自信がある。
だって先生直々教えてくれたことだし、家族で幸せいっぱいな私なんだから。
式が終わると奈央には先に帰ってもらい私は岩城先生を探した。
グレーの髪と青のカラコンなら一発だけど今はそうじゃないから見つけにくい・・・!
「探しているのは私でしょうか?西野悠里さん」
肩を叩かれて振り向くとそこには岩城先生。
「そんなこと当たり前です!話したいこと沢山あるんですから!」
「あの日はすみません。美容院で髪を黒く染めないといけなかったので。
僕もきちんと最後まで話を聞きたかったのですが」
「ふふふ、グレーの髪、青のカラコン教師じゃアウトですもん。そんなことより岩城先生」
「なんですか西野さん」
「私は世界で一番幸せな家族と生活しています」
そういうと桜の下で見せたような優しい笑顔になってくれた。
「作文、楽しみに待っていますから西野さんの家族のこと教えてください」
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