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陽介さんと暮らし始めて10年がたった。
仲良くなっていくうちに私は陽介さんを陽くん、と呼ぶようになった。
陽くんは大抵の事は何でもできる人だけど、ドジを踏むことがあり、家事を任せるのもうーんと考えるほどだった。結局家事は私がほとんどやって、昼間は陽くんに任せることにした。
鏡の前で髪をまとめる。
鏡にはクリーニングに出したばかりの綺麗な制服を着た自分がいる。長くなった髪は腰に届くぐらいになり、アレンジをするのが楽しかったりする。
でも今日は学校なのでポニーテールで動きやすく行こう。
「さて…陽くんを起こさなきゃ」
彼は私が起こさないと昼まで寝てしまい、出版社の人に怒られてしまうらしい。
陽くんの部屋に入る。いつも通り本棚いっぱいに詰まった本と、入りきらなかった本が山積みになっている部屋だ。
奥にあるベッドまでたどり着けるか不安になるが、熟練者の私は平気なのだ!
「陽くん!朝だよ!」
ベッドで布団にくるまるように寝ている陽くんを叩く。陽くんはモゾモゾと動き、顔を出した。まだ眠そうで気だるげな顔はいつもより色っぽくみえる。
「………おはよ…明日香ちゃん……」
ふにゃりと笑った顔に少しときめく。私はそのときめきを振り払うように
「早く起きて!朝御飯にするよー」
と言って足早に部屋を出た。
毎朝起こしにいくけど、そのたびに胸がドキドキして落ち着かない。
陽くんは顔もきれいだし、気遣い屋さんだ。
好きになってはダメと思いながらどんどん好きになっていく。
「明日香ちゃん?どうしたの?」
部屋着に着替えた陽くんが部屋の前に立ったままだった私に問いかける。
「な…何でもないっ…!ご飯、食べよ」
赤くなる頬を隠すように、リビングへ向かった。
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