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『姫!!お逃げください!』
綺麗な金髪の男の人。
軍人のようにかっちりとした服に、緑の宝石が埋め込まれた長い剣を腰に装備している。
彼は、慌てた様子でバタバタと家に入り、私の手をとった。
『そんなに焦る必要はないわ。子供たちはすでに“あの二人”の所に預けてあるわ。心配しないで?』
私は無意識に金髪の男性に答えた。
私の伸ばした腕は細く、病人のように青白かった。
男性が私の手を引いて外に出ようとした瞬間、勢いよくドアが蹴破られた。
『こんなとこにいたんすかー?ひーめさん?』
ガラガラと音を立てる壊れたドアの間からにゅっと姿を表したのは鎧をきた男達だった。
『姫、俺が時間を稼いでいる隙に…!』
男性が腰にある剣を抜き、構える。私には表情が見えないが、恐らく、今にも死にそうなほどに怯えているのだろう。
『その必要はないわ。私はここで、死ぬの』
私が喋る。男性は驚いて振り返り、鎧の男たちはザワザワと騒ぎ始める。
『姫…?バカなことはやめてください…!あなたには…まだ…!』
男性の懇願するような声が聞こえる。私はその声を無視して机の上にあった短刀を手に取る。
『さようなら、愛しい人。エバート、先に行くわ』
私は優し気に微笑み、胸に短刀を突き立てた。
男性が倒れる私を抱き抱え、涙をポロポロと落とす。
全身に広がるような痛みのなか私は男性に微笑みを向け、目を閉じていった。
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