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[第一部 臭くてでかくて腹が立つ] その一 お通じ
ぜひとも仇を討ちたいから旅に出ると宣言した翌日、姉さんが嫁入り先から飛んで帰ってきた。
餅菓子を腹いっぱい食っている幸せな夢を見ている最中、いきなり重たいものに乗っかられ、べちんばちんと両方のほっぺたを引っぱたかれた。驚愕して目を開いたら、姉さんが馬乗りになって睨みつけていた。
餅を食っていた夢から覚めた瞬間、目に飛び込んできたのは餅みたいなおたふく顔である。一瞬、これでもかと食いまくった餅菓子に恨まれたかと思った。
うわあ化け物こわい、と叫んだら、平手ではなく拳で顔の真ん中をやられた。痛し。
「仇だって。あんたなんかに何ができるというの、馬鹿も休み休みお言い」
へあ、と声なき声で答えると、白い寝間着の胸倉を掴まれて、ぐらぐらと上下左右に揺さぶりまわされた。気持ちが悪い。おええと吐きかけたが、姉さん容赦せず。
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