その四 桃太郎

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 ここから播磨まで、どれほどかかるだろうか。  大人になったとはいえ、女の一人旅は危険だと最初は兄様も心配した。  だけど、そのうち、あ、大丈夫か、と思い直したらしい。  「わかった、おまえの悲願なのだね。好きにしなさい」  ただし、気を付けて、道を行くときは急に飛び出したりせず。お馬は急には止まれないのだからな。  義理姉様は、別の意味で心配した。  わたしが、もうそろそろ仇討ちに行く頃だろう、と思い立ったきっかけは、つい先日舞い込んできた結婚話である。昔の秋山家ほどではないが、そこそこの家柄の武家から、年頃の娘がいるようだから、うちに来てくれないかと言う話が来たのだ。  「年頃と呼ばれる時間は短い。腐らないうちにはやく召し上げられるべき」  そこまで酷い言い方ではないにしろ、そういう意味のことを義理姉様は口にした。つまりは、いつまでも秋山のうちに居座り続けるわたしを心配するのと、いい加減出て行ってもらって、食い扶持を減らしたいと言う思いが混じっている。  食い扶持を減らしたいなら、なにも嫁がせなくても良い方法がございます。通は今から仇討ちの旅にでます故。    わたしが、仇討ちに行きたい旨をつたえると、やはり最初は義理姉様は仰天して引き留めた。     
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