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ヌァザが両腕を同時に振り、まるで抱き寄せるかのような動きでリヨルドへ襲いかかる。しかしリヨルドはそれを飛び越えると、背中を数回杖で打って背後まで移動。そして光速の抜刀が炸裂し、脚を斬られたヌァザは転倒した。
「ステラ君!救援遅れてすまない。直ちにキャンプへ行き、残された皆を守るのだ。そして到着次第、空へ信号を打ち上げるんだ。『何があっても』優先するように」
「でも、しゃちょーが!」
「何、私なら平気さ。…さ、早く行き給え」
「…かしこまり!」
ステラはそう言うと、急いで駆け下りていく。足を切られたヌァザは、もがきながらも立ち上がり、身を屈ませて力を溜め始めた。
『邪魔ヲスルナ……人間ンンン!!!』
「それはできない。私の部下に手を出す者は何者だろうと容赦はしない。ましてや、それが魔晶獣なら!」
最早何度目かわからない金属音が鳴り響き、鉱山の中腹に銀と赤の火花が散った。
〜*〜
ステラがキャンプへと辿り着いたのは、そこから十分くらいの所だった。焚火から煙が登り、テントが風に揺れている。それを見て無事を確認できたステラが安心したのも束の間、テントへと即座に滑り込む。
「やっほー!皆無事!?」
しかし、その中に居たのはヘルナ・メリシア・ロゼットだけ。嫌でも目立つ、あの男がいない。
「…ジジイは?」
「あの…下山しました」
「ハァ!?ありえな!なんで!」
「落ち着いて下さい!グイードさんは伝言を残して行きました…。『援軍を呼ぶ、合図をくれ』と」
「…!なるほどね。で、ここは地属性魔法で護りを固められるヘルにゃんに任せたと。ジジイにしちゃ悪くない策じゃん」
ステラはひとまず納得すると、テントの中のロゼットに目を遣る。やはり傷は浅いが、消耗が激しい。もしヌァザがここまで到達してしまえば、真っ先に餌食となるだろう。それだけは避けたい。急がねば!
後輩を思う意思がステラの闘志を燃え上がらせ、その指先に炎を宿した。やがて炎は色取り取りと輝きを放ちだし、まさに煌めく星のようになった。
「どこほっつき歩いてるか知らないケド…早く帰って助けろし!『スターマイン』!!」
刹那、大きな火球が空へと飛び立ち、赤黒い空に轟音と共に大輪の火炎の花を打ち上げた。
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