第六章 魔晶獣

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同時刻、上空。風吹き荒び足場も不安定な中、2人の男が、魔法で出来た即席の翼の上で座っていた。前方で手をついて魔力を操っているのは中年の男で、後方で胡座をかいているのは背の高い緑髪の青年のようだった。 「どうだい、おじさんの取っておきの魔法は。中々凄いだろう」 「空飛ぶ絨毯にしては座り心地が悪いね」 「鉄屑や鉱石の寄せ集めだからね。その分強度は折り紙付きさ」 「…しかし、何故俺の場所がわかったんだ」 「僕は叔父さんだからね。甥の行動範囲くらいわかっているものさ」 「よくわからん」 軽口を叩き合っていると、鉱山から花火が見えた。それを視認すると、青年は膝立ちになり、背に差した武器に手を伸ばした。 「…あれか」 「そうだけど落ち着きなさい、まだ早い。今降下させる…!」 中年の男性…グイードは眼鏡を一度押し上げると、あくまで冷静に魔力を注ぎ込む。風の魔力で繋ぎ止められた岩と鉄の翼はゆっくりと鉱山へと降りていった。 〜*〜 「グオオアッ!!」 「ぬぅ!!」 ステラの花火が挙がってから数分後、リヨルドの抜刀斬りも見切られてきたか、足元を刈るような横薙ぎも腕に止められ、もう片腕の突きがマントの一部を切り裂いた。裂けた箇所から、まるで血が染みるように晶気が赤黒く浸透する。 (時間が経つにつれどんどん強くなっていく。狙いが麓な分、攻撃が分散しないのは楽だが…このままでは少し不味いか) 刀で後ろへと弾き返し、納刀しながら後ろ手に構えるリヨルド。まさに膠着状態が続くかと思われた、次の瞬間。 一人と一匹の上に、巨大な影が通り過ぎる。それは一瞬巨大な鳥かと思ったが、そうではなかった。 石や鉄屑が寄せ集められて作られた、空を舞う小船のような物体が、ふらふらと飛んでいるではないか。その先端で舵を取るのは、誰もが知るあの中年男性。 「お待たせしました社長!このグイード=ジルバ、助っ人を乗せて来ましたよっとぉ!」 「おお、グイード君!助かった!」 「ささ、出番だ『トレイル』。社長も奴さんも待ってるぞ。もう少しなら高度を下げられるから…」 「いや、ここで充分だ。ここなら威力が…増す!」 次の瞬間、岩の翼から一人の人影が飛び出した。並の人間なら怖気づく程の高度から、少しもためらわずに飛び出している。接近するにつれ、その全貌が明らかになった。前髪の一房だけ白に染め、後ろでも髪を一つに束ねた緑髪の青年。手に握るのは背丈をも凌ぐ銀の長槍。それがさながら獲物に狙いを定めた猛禽のように、高速でヌァザへと迫る。 「うおおらあああっ!!」 猛然一閃。降下の勢いも乗せた渾身の突きはヌァザの上半身を寸分違わず穿ち、両者共に砂塵の中へと消えていった。
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