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「なっ…!?」
突如の闖入者に目を見張るアーディ。その砂塵を見つめると、赤い閃きと共に一人の人影が飛び出してきた。その男は槍を一回転させると、片手で持って刺突の構えに入った。
「チッ、腕で防ぎやがったか。硬い上に勘も良いとは、確かにアンタが手こずるのも頷けるよ、社長」
「不覚の一言に尽きるね、『コントレイル』君」
「だが、とりあえずヒビは入れられた。後は2人がかりで仕留めよう」
「上出来だ」
ヌァザは咆哮と共に、地面を腕で打つ。地を割りながら魔晶華が刃のように飛び出して迫りくる。
「…露払いは俺がやる。アンタは力を溜めてるんだな!」
コントレイルと呼ばれた青年はそう叫ぶと、魔晶華の横スレスレを駆け抜ける。地割れが途切れると同時に跳躍し、目の前のヌァザに向けて槍を向けた。刺突。そう理解したヌァザは腕を重ねるようにして防御の姿勢を取る。だが、コントレイルは刺突ではなく、槍の端を片手で持って大きく振りかぶっていた。
「『凱扇悶』!!」
長い槍で斬り裂く横薙ぎ。ヌァザの横面を斬りつけると、コントレイルの身体が僅かに宙に浮く。そして今度こそ槍を前面に構え、宙を蹴るように急降下した。
「喰らえ!『蹂覇襲星刹』!!」
急降下突きから流れるように二段斬りを叩き込み、防御を引き剥がすと、逆巻く風を纏った渾身の突きを今度こそ身体に突き立て、大きく吹き飛ばした。そして間髪入れず、コントレイルは槍を天にかざした。途端に空からは雷鳴が轟き、呼応するように槍の穂先が銀色に輝き出した。
「また腕を上げたね、コントレイル君。これは私もうかうかしていられないな」
リヨルドの言葉が発せられた次の瞬間、コントレイルの槍の先に銀色の雷が落ち、周囲の石が震え、木々も大きくさざめいた。突如眩く輝いた光景を目にしても、ヌァザの進撃は止まらない。亀裂が大きくなった魔晶華の腕を振り回しながら、再びコントレイルへと突進する。
「いくら強くても突っ込むばかりでよ…いい加減ノロいんだよ!!」
腕が振り下ろされると同時に、コントレイルは槍を持ったまま跳躍。ヌァザの背後を取ると、振り向きざまに白雷を纏った槍を全力で振り抜いた。
「奥義!『魔鏖聖雷陣』!!」
激しい火花と電撃を散らしながら、魔晶華ごとヌァザを斬り裂く銀の穂先。あれほど堅牢だった腕が半壊し、あまりの落雷の衝撃にヌァザの身体がぐらつく。
「うおおおおっ!!」
コントレイルが力を振り絞って槍に力を込め、渾身の一撃でリヨルドの方角へと弾き飛ばした。
「だいぶ削ったぜ!後は任せた!」
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