第六章 魔晶獣

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「見事だよ、コントレイル君。報酬に、いつか君と手合わせしてあげよう」 迫るヌァザに狙いを定めるリヨルド。仕込み刀と鞘の間からは、今にも爆発しそうな限りの炎が溢れ出していた。そして間合いに入った刹那、真紅と白銀の剣閃が閃く。 「『篝』!!」 溜めに溜めて放たれた光速の二段斬りは、魔晶華の巨腕を爆砕しながら切り落とした。破片と血が舞う中、赤熱する刀を再び鞘に戻し、ついに残像すら残らぬ程の踏み込みで肉薄した。 「これで最後だ…!」 リヨルド自身が光となったかのように、仕込み刀が眩く輝き出す。まるで白銀の流星のように光の尾を引いて、聖なる星の力を込めた銀の刃が閃いた。 「奥義!『(すめらぎ)』!!」 落雷の衝撃にも天体の衝突にも似た光の衝撃が走り、赤黒い空が一瞬で祓われた。そして、既に納刀していたリヨルドの背後には、真っ二つに切り裂かれたヌァザの身体が静かに舞い、重い音を立てて地面に落ちた。超高速かつ、超威力の居合斬り。今まで見たこともない剣技に、アーディは開いた口がふさがらなかった。 「はぁ…さすがに手こずりすぎた。私も鈍ったか」 リヨルドは何事も無かったかのように肩を回しながら言う。しかし、それでも不意な言葉らしきものは聞き漏らさなかった。足元で肉塊と化したヌァザが、裂けた口を動かして何かを呟く。 『ゴロ…ボ…ハ…花ノ、乙女、ナド…【アノ方】…ダケ…ダ…』 リヨルドが振り返った時には、もうヌァザは事切れていた。黒く変色した毛皮から晶気が抜けていき、少しずつ元のマグマグマの赤い毛並に戻っていく。 「ふむ…」 「よっし、狩れた狩れた!さっきの約束本当だろうな社長…って、どうかしたか?」 「いや…何でもない。私はこれから『ブルームヴェルト』に報告へ向かう。君はどうする」 「そうだな…俺はこの坊主を送るがてら、キャンプの連中の護衛でもしよう。ステラがついていたのなら、後で落ち合って報告に同行させればいい」 「同感だ。では頼む」 リヨルドはそれだけ言うと、鉱山の奥へと歩みを進めてしまった。あれだけの大物を倒した後だと言うのに、普通に仕事を片付けた後かのような振る舞いだ。アーディが呆気に取られていると、コントレイルが近づく。 「ま、そんな訳だ。支援のつもりが巻き込まれて大変だったな、坊主。俺はコントレイル=ゼファス。ステラと同じ極星騎士(メテオセイバー)さ。勝負は着いた!皆揃って下山しようぜ」 頼れる好青年という感じの笑みを浮かべながら、長槍の青年は語りかけたのだった。
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