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面接担当の者が来るまで待っていてほしい、とヒーリアに言われて通されたカンパニーの内部は木造の一軒家そのもので、藤で編まれたパーテーションで四脚の椅子と机が並べられた空間が区切られていた。どうやらそこが会議室や応接間らしく、ヒーリアは待たせてからは入口からすぐに見える受付の中に消えて行ってしまったので、応接間には耐えがたい重苦しい空気が漂っていた。
「…お前さ、ちょっと急すぎ。カンパニーってのもそうだけど、せめて王都で働くってことくらい早く教えてくれてもよかったんじゃないか」
「…そこはごめんなさい。少し恥ずかしくて」
「てか、なんでカンパニーなんだ。結構危ないぞ、ここの仕事」
「わかってるわよ。でも…」
「まあまあ、落ち着いてね二人共。カイトさんもう少しでくるから、これでも飲んで待っててね」
すると、いい所でヒーリアの助け舟が入った。二人の前に差し出されたのは湯気を立てる黒い飲み物。コーヒーだ。お盆を胸に抱き、ヒーリアは屈託のない笑顔を浮かべた。
「あ、ありがとうございます、ええと…」
「ヒーリア=エレクセン。このカンパニーの総務課で、主に窓口業務をしてます。よろしくね、アーディ=ホーキンスくんとメリシア=アミルナスさん。二人共幼馴染みたいだし、私的には仲良くして欲しいかな~と…」
「いつもは仲いいんすよ。ただちょっと驚いてるというか…」
「うーん、長旅のストレスっていうのもあるかなぁ。ここからエルンタルだと、馬車で丸三日でしょう?その足で来たんだから、無理もないかなぁ」
(それにしてもかわいい声だな、ヒーリアさん…)
ほんわかとした雰囲気と愛らしい声に、思えば三日は陰険な空気だったメリシアの心は少なからず安らぎを覚えていた。
「まあ、その辺含めて窓口で聞いてるね。ただ、カイトさんは少し怖いけど、根は良い人だから、どうか怖がらないで…」
「聞こえてるぞヒーリア、オイ」
すると、出し抜けに木の扉が開いて黒髪の長身の男が入って来た。紺色のブレザー越しにもわかる屈強な肉体は、素人目から見ても歴戦の戦士を思わせる。
「ひゃっ!お、おはようございますカイトさんっ」
「応。おっかない先輩の出勤だぜ」
「ご、ごめんなさい…」
「仕方ねぇなぁ。…さて、今日の午前中は面接と社長から聞いていた。で、その相手ってのはそこの二人かい」
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