おはなをあげる。

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「確かに、スギ君もどうかと思う。でも、だからって殴る必要はなかったんじゃない?先に喧嘩ふっかけてきたのはあっちでも、手を出しちゃったのはえなの方。それは、よくないんじゃないの?」  みか、君が正論だ。私は一人うんうんと頷いている。  最近花の様子を見るという名目で、すっかり彼らの会話を盗み聞きし、観察するのが日課になってしまった。隣の家のヤスエあたりに見られたら絶対からかわれるだろう。というか、どこの不審者だと転がって笑われそうである。 「でも、あいつは絶対言っちゃいけないことを言った!俺は許せない!」  二人の会話が遠ざかっていく。ああ、いつもの楽しい時間もこれでおしまいだ。私は諦めて溜息をつき、家の中に戻っていった。夕方にも彼らに会えればいいのだが、残念ながら彼らの帰る時間は一定ではない。多分部活の時間があるからだろう。時には委員会だとか、二人で買い物に行っているとかなんとか――それを想像すると、ホンの少しだけ胸が痛くなる。  私は、えな、のことが好きだ。  絶対に結ばれない相手だとはわかっている。そもそもこんなオバサンなど、それだけで相手の眼中にはないことだろう。それに、二人はどう見ても両片思いというやつだ。少くとも、みか、がえなのことを好きなのは明白である。みか、は女の私の目から見ても美人だ。さらさらの長い黒髪に、真っ白な肌、昔ながらの大和撫子(というには少々性格は勝気であるようだが)。あんな女の子に好かれて、嫌な気になる男はいないだろう。  えな、はまだ精神的に幼いようだから、そういう恋愛感情には疎いかもしれないが。いつか必ず、二人は恋人同士になるだろう、という確信が私にはあった。それを、他の誰かが邪魔してはいけないということも。――そもそも、私は恋愛的な意味でえなのことが好きだけれど、みか、のことも断じて嫌いではないのである。彼女は、優しいし気が利くし、いけないことはいけないとはっきり言えるとても良い子だ。私が気分が悪くなって軒先でぐったりしている時、大丈夫?と声をかけてくれたこともある。えな、の恋人として、これ以上相応しい相手はいないと思う。
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