3/10

798人が本棚に入れています
本棚に追加
/64ページ
宗二郎とはごく普通の友達だった。親友とまでは行かなくとも、教室で雑談したり一緒に昼食を食べたり、グループで遊びに行ったこともある。地元も同じF市だし、部活がなければ2人で帰る事もあった。 佑はただ、宗二郎を視界に置いて声を聞けたらそれで満足だった。カッコいい同級生に仄かな憧れを向ける事自体は、別にそこまでおかしくはない筈だ。それが恋だと言うことには固く蓋を閉め、心の奥底の更に一番底にしまっておいた。身近な人間に生々しい感情を向けるとろくな事にならないと、本能が語りかけてきた。 2年生になってクラスが離れ、寂しかったけれど安心もした。国公立進学クラスの宗二郎とはこの先道が分かれる一方だし、自分の性格上そのうち忘れる。週に1コマの倫理社会の時間さえやり過ごせばいい。 その週に1コマを心待ちにする自分がいる事にも、本能に従ってまた何重もの蓋をした。 そして月替わりかと突っ込みたくなるほど、いつも違う女の子と歩いている宗二郎の姿を見るにつけ、青春って素晴らしいと(うそぶ)く癖がついた。
/64ページ

最初のコメントを投稿しよう!

798人が本棚に入れています
本棚に追加