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高校の3年間はあっという間だとよく聞く。 佑は高校卒業後は働くと決めていたし、クラスの半数以上はエスカレーターで進学する。国公立受験クラスとは校舎まで違うからか、特有の焦燥感的なものとはほぼ無縁の一学期だった。 部活も無事に引退となり、佑にとっては恐らく人生最後の夏休みを迎えた。別の高校に行った中学の同級生が夏期講習だなんだと忙しい中、家業を手伝ったり手伝わなかったり、のんべんだらりと時間を潰す日々を過ごした。 そしてその夏休みも終わりが近づいたある日、F駅前ビルの書店で宗二郎と会ったのは偶然だった。 「佑って男が好きなの?」 2007~2008年のスーパーヒーロータイムは佑にとって神がかった1年で、日曜の朝から戦隊ものとライダーものの二本立てに釘付けだった。家族から中学生にもなって何をやってると蔑まれても、聞こえないフリを貫いた。それから数年経っても、書店に並ぶ雑誌にサトウタケルやD-BOYSを見つけると胸がときめく。リョウタロウもジャンもリオも、佑にとっては永遠のヒーローでアイドル。キャスプリの黒王子に至っては愛読版と愛蔵版の二冊を購入し、たまに眺めては溢れる幸せに浸っていた。
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