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ギッチギチに蓋を閉め、心の奥底の更に一番底に沈めた想いが、今にも浮かんで来そうな感覚に囚われた。きつく閉め過ぎたが為に人知れず発酵し熟成されて、もしも開けたらシュールストレミング的大惨事に陥るような……危険な予感がした。 「今日は家族と約束がある」 「じゃあ明日は?」 「海の家手伝わないと。じーちゃん腰が悪いから」 宗二郎はTシャツの裾から手を放し、またテレビと向き合った。かと思うと徐ろに立ち上がり、どこかへ引っ込んでまた戻ってきた。 「これやる。持って帰って」 緩衝材のプチプチに包まれた……蜥蜴(とかげ)? モザイクタイルで表面を覆った、10センチほどの綺麗な蜥蜴型マグネットが入っている。 「兄貴のスペイン土産。俺、虫とか爬虫類とかキライだから持って帰って」 何となく断れなくて、佑は蜥蜴を握りしめたまま宗二郎の家を後にした。
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