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入学当初はやたら日焼けしてる事以外、特に印象がなかった。身長も体重も宗二郎とさほど変わらず、人懐っこい笑顔から覗く白い歯が爽やかではあったけれど、特筆すべき事のない、普通のクラスメイトだった。 が、佑がこの高校を選んだ理由が、市内で唯一の水球部があるからだと聞いた時は驚いた。大してスポーツに力を入れていないユルユル私学の中で、一際浮いた存在の熱血水球部。熱血の割には戦績の捗らない部活の為に入学してくるなんて変わり者だ。しかも水球って体型でも雰囲気でもないし。 その佑が、二学期の始業式にはまるで別人のように変貌を遂げていた。広い肩幅、大きな背中の逆三角形、背もぐんと伸びている。幼かった顔まで大人っぽく精悍になって、本気で『誰だおまえ』と思った。 聞けば、夏休みは毎日、学校から海までランニングして遠泳して、またランニングで戻ってくるのが水球部の活動だったらしく、新入部員の半数くらいが脱落していた。 なのに佑は、いつもへらっと笑っていた。笑顔だけはちっとも変わらなかった。
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