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でも、こんな新鮮さならいらない。 佑が自分の想像もつかない世界で生きている事が悔しくて悲しい。普通に大学生とか地元の漁師とかになっていてくれたら、同窓会でもなんでも会える機会はたくさんあった筈なのに。会おうと思えば友人としていつだって会えると信じていたのに。 教育隊ってやつを経て今は海自?舞鶴?どこだそれ。盆とか正月とかいつ帰ってくるかも明確にわからず、外海に出たら連絡も取れない。だから今日も誘えなかったって何だそれ。電波の届かないところに行っちまうなんて反則だ。 こんな事ならあの日、無理矢理でも引き留めて、たとえ気持ち悪がられても好きだと伝えれば良かった。簡単に諦めなければ良かった。玉砕したその後でなら、たとえ地球の裏側にいようが応援できたのに。日本の為に頑張ってくれとか何とか、気の利いた言葉のひとつも言えたのに。 クラスが離れても、会えばいつも笑ってくれた佑。でもそれは、自分が特別だった訳でもなんでもない。佑は誰にでも優しかった。 わかっていたけれど、こうして自分が何も知らない事で、改めて現実を突きつけられるなんてあんまりだ。
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