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失恋した訳でもないのに失恋した気分を抱えたまま、半ば自暴自棄で大学生活を過ごした。 高校生の頃と同じく女の子は途切れる事なく寄って来たし、周囲が就活に追われる時期になっても、両親の建築事務所に転がり込む予定の宗二郎はどこ吹く風だった。二年経ったら国家試験を受け、一級建築士にさえなれたらこっちのもの。兄と同じように、その後はどこか外国へ行くのもいい。 夫婦揃って成功者の両親や、サグラダファミリアの建設に携わる兄のように充実しないまでも、ただただひっそり生きて行きたかった。やっぱり自分は生きづらい性質なんだ。それは昔からわかっていた事だった。
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