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「好きなだけ掛けてやるからストップって言えよー」 甘いものに目がない宗二郎にとって、それは夢の世界の言葉だった。 両手で器を捧げ持っていると、佑は真っ赤なシロップの掛かった氷の山の頂上から、ミルクのシャワーを回しかけてくれる。くるくる落ちてくるトロトロの練乳が、その温度と重さで氷を少しずつ溶かす様を、宗二郎は食い入るように見詰めた。子供の頃、遊園地で食べたかき氷にこんなシステムは無かった。食べ進めると、底に行くほどミルクは薄く存在感が無くなるものだった。でも、今は、今は………! 「おい、そろそろストップ言えよ。手にこぼれるぞ」 「好きなだけ掛けてくれるって言った」 「じゃあちょっと食って量減らせ」 両手の塞がった宗二郎に、佑は最も甘そうなところをスプーンで掬って差し出した。 「ほら、あーん」 「あ──……んまっ……!」 「当たり前だ。糖尿になるぞ」 「あーんっ!」 「ハイハイ。見てるだけでアイスクリーム頭痛になりそう」
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