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実際のところ自衛官時代、陸に上がれば独身の付き合いで風俗に行く機会は何度かあった。佑にとってはキャバクラ等々より、個室の風俗店の方がはるかに好都合。性癖が上官にも同僚にもバレない。 個室の中ではいつも高級な梨やらリンゴやら、季節の果物を剥いてもらい、シャインマスカットを一房食べても叱られず、しかも『休憩させてくれてありがとう』と感謝された挙句に帰りのタクシー代までくれる優しいおねえさんまで居て、社会生活を上手く回す為のカムフラージュにはもってこいだった。 世の中には色んな人間がいる。自分のように恋愛対象が男の男で、且つ性欲の薄い人間だっているだろう。 海上だろうが陸上だろうが男に囲まれて日々を過ごし、招かれた結婚式の会場が詰襟やセーラー服で埋め尽くされるのを目の当たりにしても、目の保養にはなるものの反応しない。結局、自分が妄想できる相手は宗二郎ひとり。 佑は諸々を諦めて、仙人のように生きようと思っていた。その実践中だった。
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