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家族向けとも言える小さな海水浴場には、10年ほど前まではズラリと海の家が並んだものなのに、今ではここを含めて3軒を残すのみとなった。理由は、浜辺一帯を管理運営する漁協関係者の高齢化と後継者不足にほかならない。少子高齢化の波が田舎の小さな漁師町を侵食中だ。 「さっきシャワー室のほうチラ見しただろ」 「うん。ほんのり浮き出た僧帽筋と大臀筋が好みだったー」 「せっかく試験終わったのに……気が休まらん」 「俺は宗二郎だけのもんだから安心しろ」 「嘘くせー」 佑は聞こえないフリで氷削機をガリガリ回し、宗二郎の好きなシロップ練乳あずきたっぷりの甘ーいかき氷を作って差し出した。 「カレーは適当に自分のタイミングで注いで」 「んー」 汗を拭きつつ焼き場に戻って、名物の玉子焼きを菜箸でくるくるひっくり返す。これを焼いたら火を落とそう。 もうすぐ夕方。真っ赤な太陽が海を朱く染め上げるまで1時間掛からないだろう。店内に帰り支度の客が増え始める中、宗二郎は屋外テーブルのパラソルの下で、かき氷をシャクシャクと穿(ほじく)りながら海を眺めた。
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