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二年生になって、夏休みが近づいた。アキラたちは、バンドコンテストに向けて練習に熱心だった。そんな或る日、お昼休みに校庭でたまたま智子と二人でいるところにアキラが通りかかった。アキラが智子に「俺たちのバンド合戦に君も来てくれるの?」と訊くと、「うん、あの。」と生返事をする。私が「あの、この娘(こ)ね。」と言おうとすると、智子は、「留学するから、行けないんだ。」とロンドン行きを打ち明けた。
その時のアキラの顔が今でも忘れられない。どんどん曇っていって、俯いて落ち込んでいるのがはっきりわかった。彼は、私に何も言わずにそのまま行ってしまった。
次に会った時、私は、「本当は智子が好きだったの?」と問い詰めた。
「えっ!そういうわけじゃ。」
「じゃあ、何よ。なんで留学であんなに落ち込んでたの?おかしくない?」
「違うんだよ。ロンドン行くって聞いて、俺、取り残された気がして。」
「そんなにロンドンが好きなの?追いかけていけば。大好きな人を。」
アキラは何か言おうとして上手く説明できないまま、口籠った。私は頭にきて、説明を待たずにその場を去った。もう彼とは会わないと心に決めて。
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