7.今でも好きだけど、まだダメなの

2/2
前へ
/16ページ
次へ
 アキラたちのバンド・レイジーボーイズは、学区内のコンテストで2位となり、秋の都大会に出場が決まった。それで、先生たちの計らいで、夏休み前に学校で凱旋ライブが行われることとなった。その日は、ちょうど他校との練習試合があって、私はそのライブに行かなかった。彼女なのだから、部活を休んででも行くべきだった。でも、私は、「もう彼女じゃないし。」と意地を張っていた。  クラスの友達が夜電話で、「レイジーボーイズ、かっこよかったわよ。」って教えてくれた。「ラストにね、アキラさん、チューリップの「青春の影」を歌ったんだけど、なんか凄く気持ちが籠っていて、ジーンとくる感じだって皆言ってた。」と付け加える。  「青春の影」って、どんな歌だったっけ?これは、アキラのメッセージかもしれないと思い、世良さんの前にチューリップのファンだったお姉ちゃんにレコードを借りて、応接間のステレオセットで聴いてみた。  サビの部分で、自分の夢を追うことをやめて、これからは君を幸せにする、とヴォーカルが歌っていた。私は、何度も何度もこの歌を聞いた。自分が講堂に座っているつもりで、アキラが歌っている姿を想像しながら。 
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加