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2.送りバントで全力疾走
智子と話していると、どうしてもジョーと友達になりたいという気持ちが伝わって来た。彼女にとって、ジョーは明日への扉のようなものなんだと思う。幼い頃からイギリスに憧れていた智子。そこに突然現れたロンドン育ちの男子。いろんなことを教えてもらいたいのは、当たり前。だから、友達の私は、一肌脱いだ。
いきなりジョーんとこ行って、「この子、あなたとお友達になりたいって言ってるの。」とは言えない。まずは、山中君のところへファンだと言って押しかける。それでコネをつけて、ジョーに紹介してもらう、この2段構えを考えた。
でも、私は、友情だけでそんなことをしたわけじゃない。ソフトボールで譬えれば、送りバントで智子を二塁進塁させるみたいな話だけど、でも本音を言えば、私も全力疾走して、あわよくば一塁セーフになろうとしていたの。
山中君は実際に話してみると、見た目の陰鬱な感じと違って、意外に快活な人だとわかった。思い切って「ファン第一号にして」と申し出たら、ちょっと恥ずかしそうにしながら、満更でもないって顔をしていたわ。でも、「バンドの演奏が聴きたい」って言ったら、練習中だとあっさり断られてしまった。
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