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<1>就職戦線に突入であります~ハヤト~
リビングにポッカリと浮かんだ漆黒の空間。直径五十センチほどの球体。
「チハル?」
あれっ
おかしいな
そこにいたはずのチハルの体が、半分欠けている。
「お兄ちゃん。助けて…」
苦しそうな表情のチハル。必死に、手を伸ばしてきた。しかし、その指に触れた途端、チハルは漆黒の空間へと吸い込まれていったのだ。
息絶えそうな悲鳴を残して…
あぁ
またしても、僕は彼女を救えなかった。
ハッ
なんだ、夢か。ベッドの上にいる自分。酷く寝汗をかいている。もう何度目だろう。妹のチハルが消滅した時の記憶。あれから十年近く経ったというのに。忘れた頃になって、夢として蘇ってくる。
あの黒い空間は、一体何であったのだろうか。その後、家に乗り込んできた、怪しげなスーツ姿の人達。色々と綿密に調べて帰っていったけど。その調査結果は、フィードバックされず仕舞い。行方不明のまま、処理されたチハル。結局、チハルの存在が、この世界からポッカリと抜け落ちたまま、ただ時間だけが経過してしまっている。
思い返してみれば
あの時の経験が、僕の人生を決定づけたわけで。物理学の道を志したのも、決して無関係ではない。
あっ
いかんぞ!
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