第一章「代償」

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   口外は絶対にするなと、釘を刺された僕はコクコクと何度も頷く。泰明は一つ溜息を零すと、詳しい話を聞かせてくれた。  泰明の実家は小さな不動産屋を営んでいて、その(くだん)の一年生、神近(かみちか) 智依(ともより)が半年ほど前に店を訪ねてきた。  県外から単身、こっちに引っ越してくるという。理由としては地元には希望する高校がなく、こっちに出てきたというよくある理由の一つだ。  そんなことより実家が神社なのにも関わらず、見た目が今時の若者みたいで驚いたそうだ。  明るい茶色に染めた髪にピアスをし、幼さは残るも容姿端麗で大人びた印象。受け答えに関しては思いの外、真面目に明るく答えていく。言葉遣いも酷くはない。その点では、性格は悪くはないと見受けられた。  契約の際に来た父親はいたって明るく柔和な雰囲気で、神主と言われても納得がいくような佇まい。終始穏やかな雰囲気だったが契約の時以外は顔を出さずに、息子に全てを委ねているようだった。
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