第一章「代償」

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 僕は寝っ転がりつつスマホを手に取ると、今日の心霊番組に対する周囲の反応を確かめるべく、SNSで感想を流し見ていく。案の定、『作り物感が半端ない』『何度も見たことがある』と低評価だった。  そもそも、心霊番組で本物を流すこと自体が稀な事なのだ。人々を楽しませる夏のエンターテインメントとして、製作者サイドが全身全霊で作り上げている謂わば芸術作品。僕はそういう風に捉えていた。  作り物と分かっていても全身が恐怖で粟立ち、一気に体の温度を奪い取られていく。怖い、でも見たい。この相反する感情に僕はすっかり虜になっていた。  だからといって、リアルでの恐怖は求めていない。心霊スポットも自らは行かないし、巷で話題の『ひとりかくれんぼ』や『コックリさん』などは情報だけ仕入れて実際に行う気はなかった。というよりも、僕にそんな事は出来ない。なぜなら、怖いし恐ろしいからだ。  純粋に楽しむ視聴者が少ない事にモヤモヤした感情を抱えつつ、今度は親友の鐘島(かねしま) 泰明(やすあき)に電話をかける。  
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