眷属という者。

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「いつか、はな。人のそれより遥かに長いことは確かだ。それに、私だって永遠と思ってたさ。だが違った。家族は殺された。永遠の命などありはしないさ、必ず最後は来る。そしてその日は誰にも予想できない。眷属など嫌になったか?」 珍しく旦那様が少しお笑いになって聞くので、驚いてしまいました。 「いいえ。先の事が分からないのは当たり前の事でございましょう? これからわたくしがどう変わるのか楽しみです。 ただ、ひとつお願いが。」 「何だ。新しい商売でもするか?」 「いいえ。これから先、わたくしが自分の意思で生きられなくなった時、わたくしが人を襲う様になった時、その時には旦那様の手でわたくしを殺してくださいませ。 わたくしは心は人のまま居たいのです。自分の意思で自由に生きて行きたいのです。それだけお約束して下されば、わたくしは旦那様を裏切る事はございません。例え、明日毒が身体に廻って死んだとしても、旦那様に感謝こそすれ、お恨みする事はありません。」 「約束はしてもいい…が、血を飲みたくなったらどうする? やはり、襲うしかあるまい。」 旦那様はちょっとにやりと笑うと意地悪な質問をする。 「襲いません。 血を分けて頂く方を探します。お腹が空いても出来るだけ我慢致します。人様の首に噛み付くなんて、はしたなくて出来ません。」 「お前の中で、死ぬ事より大きな事は、母親に傷をつけない事か… もう、いないのにそこまで大事か?」 世が世なら、お姫様である母の娘が、人様の首に噛み付く… 出来るはずがない。 「いないから…こそ、余計に大事なのですわ。きっと。母がどれほど素晴らしい方だったかを証明出来るのは、1人娘のわたくしだけなんですもの。娘を見れば、育ちを見れば親がわかると申します。母が生きていたら、ここまでは思わなかったと思いますわ。」 「プライドというものは時には生きる事の邪魔になる。どう変わるのか見てみたいというのもあったがな。お前は面白いよ。お前のプライドは高いのか低いのか分からんとこがいい。」 「ぷ、ら………。て何ですか?」 「いや、いい。 とりあえず、お前の眷属性質がどう出てくるか様子見だな。今の所、無茶苦茶………元気な位だな。」 わたくしを見て旦那様がそう呟きました。 その頃のわたくしは病気だった事が嘘の様に元気で、毎日忙しく働いておりました。 眷属性質の事など全く考えずにおりました。
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