眷属という者。

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ある日、ふと思いつき、ダンナに一度目の眷属について聞いてみた。 夕方、いつもの様に出掛ける前の食事中だった。 「最初の眷属の方は毒、だったんですよね? 亡くなられたのですか?」 ダンナが話したがらない事も知っていたので、言葉を選び丁寧に聞いた。 「ああ。毒だった。血を与える前にもっとちゃんと話すべきだったが、どう作用するか何て、わからなかったしな……。」 珍しく語ってはくれたがそれ以上は言わなかった。 ダンナにとって初めて血を与えた人物は、きっと側に置いておきたいほど気に入ったに違いない、もしかしたら、好きな人だったのかも? 何ていう俗物的な事も想像した。 だから、それ以上はもう聞かなかった。 仕事に行くとVIPルームに望月様が来ていた。 ご丁寧に指名されて仕方なく部屋に行った。 あくまで普通の人、眷属など知らないという様子で。 望月様は何度も自分も眷属にしてくれ、仲間に入れてくれと繰り返した。 その度に僕は、何を言っているのか分かりませんと繰り返した。 すると望月様はポケットから十字架を取り出し、チラチラと見せた。 「どうしたんですか?」 「いいだろ、これ。 そこらの安物じゃあないよ? 」 「高いんですね? 良いですね。」 「良いだろ? ちゃんとした教会の牧師様にお祈りしてもらって聖水までかけて頂いたんだ。効果は抜群だと思うんだよね?」 「へぇ……望月様がクリスチャンだとは知りませんでした。」 平然と言うと、 「これを当てられたくないなら、君が黒さんに頼んでくれよ。 俺を眷属にする様にって。」 酔っているな、と思った。僕が指名される前に随分、派手に女の子達と飲んでいた様だった。 「だから、望月様飲み過ぎですよ? 知らないんですよ。その、黒さん?とかいう人も、眷属何とかも……。」 僕がそう答えると、望月様は十字架を僕の額に押し付けた。 酔っているせいか、僕をソファーに押し付けて馬乗りの様な格好になった。 「どうだ? 眷属とはいえ、これはきついだろう?」 高笑いで、それは部屋の外にも聞こえた様で黒服が来た。 「望月様、何をされているのですか?」 黒服が望月を僕から引き剥がした。 「見ろ! そいつの正体を……。」 望月が指指した先には、額を赤く腫らした僕がいた。 「急に望月様が、十字架を私に付けてきて、 力が強いから、ぶっちゃいました。かなり酔われてる様ですね。」
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