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僕は言いながら押さえていたおでこを見せる。
おでこは赤くなっている。
「大丈夫ですか?控え室で冷やして下さい。」
「お前、何で……なんでだ。眷属だろう、火傷は、火傷はどうした」
望月の怒号が聞こえる。
「火傷? それ、高価な物なのですよね? 壊れてませんか? 私は平気です。冷やして来ますから、失礼しますね。よろしくお願いします。」
黒服に一言添えて部屋を出た。
もう高い指名料をもらっても、あの望月の所には行きたくないと思った。
「バカ、何すかねぇ。ボンボン…て。」
昨夜の出来事を食事中のダンナに話す。
ここだけ聞くと夫婦みたいだが…。
ダンナはゴホッとむせてから、
「ボンボンに、失礼だろう……。」
と呟く。
「だって、あの人どう見てもエセクリスチャンっすよ? 産まれてからちゃんと洗礼を受けてるクリスチャンの十字架だって効かないのに、昨日、今日なったエセクリスチャンの十字架が効くわけないじゃないですか。しかも、金に物を言わせた聖水に何の効果があると思ってるんですかね。」
「吸血鬼に十字架、間違いではない。」
「ダンナ、効かないじゃないですか?」
「効かないわけじゃないさ。使う相手にも物にもよる。まぁ、昨日なったキリスト教徒のボンボンのは…大丈夫だろう。」
「ダンナが、説明したら早いんじゃないですか? 俺の血は毒だ!って。」
フォークをダンナに向けて言う。
「したさ。 飲んでうまくいくわけじゃないと。試したいという。」
ダンナは呆れ気味で言う。
「もう、飲ませたらどうですか?」
僕は面倒臭そうに言う。
「多分、100パー駄目だろう…… それにもし、上手く眷属になったら、お前、一緒に暮らせるのか?」
想像してみる。
「いっやぁ、きついっすねぇ…ボンボンかぁ……あぁ、手の掛かるボンボンが二人かぁ、きついっすわぁ。」
僕は心の底からそう言った。
「おい、誰がもう一人のボンボンなんだ?」
ダンナが最後の皿を綺麗に食べ終わり聞いた。
「そんな事、言いましたっけ? あ、食べ終わりました? 片付けますね。」
「誰がバカなボンボンだ?」
もう一度、ダンナが聞く。
僕は無視して片付けを始めた。
ダンナはブツブツ言いながら出かけて行った。
ボンボンではないぞ……と。
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