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急に元気を無くした私に、
さすがに母も祖母も何も言わずに優しく接してくれた。
私はそれを利用して、30まで1人でいたいと申し出た。
家族に意見をするのは初めての事だったかもしれない。
妹の百合にも不動産業を継ぐための婚約者がいて、結婚を控えていた。そのため、否応なしに姉妹の結婚の順番は逆になってしまう。
新しい人を見つけるから、と何度も食い下がられたが、首を横に振り続けた。
「後生です。30までは家を出て、1人で生きたいです。そのあとは、必ず決められた方と結婚します。」
そういって頭を下げると、
母は首を横に振ったが、祖母が赦してくれた。
滅多に口を挟まない父も背中を押してくれた。
「蘭には、家を背負う義務があるが、人生を全うする権利がある。期限を決めて、義務を果たすと決めているんだ、応援してあげよう。」
初めて父の人間味に触れた気がした。
その言葉に、母は鼻で笑って、
「あなたは気楽でいいわよね」
と呟いたのだ。
その言葉は、
百合がいてあなたの家業は安泰でいいわよね、に聞こえて。
私の人生は、一体何のためにあったのだろうと後悔した。
母の決めた小学校から大学まで出て、
就職活動では、母が選んだ会社を受けて、
決められた人と婚約しお付き合いをした。
こんな、つまらない人生、要らない。
そう思った矢先の事だった。
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