拒絶王Ｇ×３

最強の転生勇者

　独特な学生服姿の少年は、派手な装飾が施された大剣を背負う。

　彼は、荒涼とした土地を一歩一歩踏みしめながら前進していた。

　拒絶の壁と言われる分厚い岩盤のような城壁が見えた。そこに住む魔王によって何人もの戦士が倒され惨い仕打ちを受けたと聞かされた。凶悪で最悪で邪悪な狂王は、一見ゾンビのようでヒョロリとしているが、それはカムフラージュ。
　いざ戦おうとすると、その本性を現し、絶対的な力で、千人の兵士を一瞬で殺戮したと言う。その中には、まだ年端もいかぬ少年もいた、らしい。

　手下に悪魔のような女がいて、強力な幻術で、心をへし折りに来るので、気を付けてください。と、筋肉痛でベッドに横たわる兵士が苦笑しながら忠告した。

　少年は１７歳。東京と言う場所から、この領域に飛ばされてきた。

　学校では、目立たないがそこそこイケメンで、何気ない日常を過ごしていた。ある日、パンを咥えながら登校している途中で、１０トントラックに轢かれた。気が付くと真っ白な空間に居て、神と名乗る存在から事故は手違いだった。と告げられ、なんやかんやでファンタジーの世界に飛ばされる。
　そこでは、少年は最強でモテモテだった。アッサリと悪の大魔王を倒し世界的ヒーローとして賞賛され国賓扱いされる。だがしかし、そんな日々も長くは続かず、別の場所に飛ばされる。そこでも悪の組織を一網打尽、またしても英雄として称えられるが、その数日後、また飛ばされ、という事を十数度繰り返し、この地に辿り着いた。

　少年は最強である。数々のラスボスを倒し、戦闘力は最強レベル。

　しかし、人間としてはまったく成長していない。むしろ、人間として、何か大事な物を失っているし、その事に気付けない。人間としてのレベルは５くらいの器である。