最強の転生勇者

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 少年はひたすら歩む。拒絶の壁と呼ばれる壁が見えて数十分。ほとんど大きさが変わらない。近づいている実感がない。気温は40度近く。地面は乾燥しきっていて、一歩踏み込むごとに、土の粉が舞い煙を上げる。 「チィッ、スピードを上げるか」  呟くや否や、少年は足の回転速度を上げその一歩一歩の距離を伸ばした。瞬間移動を考えたが、一度も訪れた事の無い場所への移動はできない。という事を思い出し『フゥ、危うく石の中に瞬間移動するところだったぜ。まあ、俺なら石ごと壊せるから平気だけどな』と、心の中で呟いていた。  スピードを上げた直後、少年は大きな気配を感じた。 「来たか」  その場で足を止めた少年。目の前に靄のように広がる土煙が、拡散される。人影が、徐々に鮮明に見える。そこにいたのは女性。眼の細いニコリとしたグラマラスな女だった。 「こんにちは」 「どどどど、どうも、こ、こんにちは」  女性の甘いような声に翻弄されて、緊張し過ぎの少年。 「私は、ベリエステル・ベルメルト、通称ベリベルです。アナタは?」 「た、ダーク・ジ・エンド・ブレイカーズ、で、です」 「あら、あなた、勇者的な人、なんでしょ?」 「え、ええまあ」 「まら、ダークとかジ・エンドとか、良くないんじゃないの?」 「ま、まあそれは仮名と言うか通称なので」 「そうなんだ」  強烈な胸元を直視したダーク・ジ・エンド・ブレイカーズは、目を反らして、鼻を押さえる。アドレナリン放出過多で弾けそうな状態である。
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