最強の転生勇者

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 装備もそうだが、彼の力もほとんど感じ取れない。最弱のモンスターよりレベルが低いのか、強さと言う物を感じ取ることができない。見た目はゾンビのようだが、襲ってくる様子もなく、直射日光に直撃されてもたたずんでいる。ただそこに存在しているだけの無口な村人かと思ってもいい印象の少年を見て、リョウタくんは唖然とした。 「お前、悪さばっかやってんだってな」 「……」 「極悪非道のゲスなヤツなんだろ?」 「……」 「お前、生きてんの? 死んでんの?」 「……」 「お前、友達とかいないだろ?」 「それは、いますよ、沢山。こう見えてガレ様は、国民に慕われています。老若男女問わずの人気者なんですよ。友達は、私だけですが」  相変わらずの無反応なガレ王に変わり、ベルベリは、少女の高い音域の声で早口に喋り、キュートな笑顔でリョウタを威嚇した。 「まあいい、とりあえず、お前を倒してここでも英雄になる」  リョウタは大剣を背から抜き、両手で力強く握りしめると奇声を発した。衝撃波と共に眩い光に包まれ、それが徐々に消え去る。 「グフッ」  金髪を逆立てたリョウタくんは、みぞおちに強い痛みを感じた。変身前まで、ほとんど棒のような存在だった、同い年くらいの少年の肘が、深々と内臓に刺さっている。あばらは既に何本か砕けている。 「べんじんじゅうば、ダメでしょうが」  変身中はダメでしょが、と言う言葉を発するリョウタくん。明瞭に言葉が聞こえるように、その後半には粉砕された骨も回復していた。 「あら、これはなかなかですね」  ベルベリは、細い眼を一瞬丸くして喜んでいる。圧倒的な強さのガレ王は大好きだが、たまにはピンチも見てみたい。そんな時は私の出番、などと妄想が膨らんで、少女は恍惚状態に陥っている。
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