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“それ”は穏やかな市街に突然現れた。30メートルはあろうかという巨体は、
あちこちが腐乱し、凄まじい臭気と、開いた口に並ぶ、鋭くとがった歯群が凶悪な印象を
もたらしている。素早く気配を察知したキイが展開させた結界で、一般市民の目に
触れる事は何とか裂けられたが…
「これがジャマ?信じられないのだ。」
「エエッ、マリ、今マデノ敵トハ、レベルガチガイスギマス!」
思わず呟くマリとコールに頷くキイ。ジャマとは本来、世界中に溜まった障気の塊。
人に限定されず、環境破壊や居場所を奪われ、殺された動物達の恨みや憎しみ、悲しみが
形となり、世に害を為す存在と聞いている。
しかし、世界各地でキイの同僚達が支援した変身ヒロインの少女達が彼等と戦い、障気を
拡散させ、世にもたらせる障りを最小限レベルに留めていた。だからこそ、
敵の姿も不確定かつ、人間大の大きさがほとんどの筈だった。
それが、この巨体、理由は明白…
(マリさんが最強すぎるからか…)
敵も総力を持って戦いを挑んできたのだ。恐らく世界中の仲間達は助けにこられないような仕掛けを施して…現にキイの通信に答える同僚は誰もいない。
現状最強のマリを始末するために“ほぼほぼ最終決戦”に近い形を相手はとってきたのだ。
(アニメで言うなら、4、5話やって、一気に最終回。番狂わせには、番狂わせ…
全て、こちらの油断…最強に拘るあまり、敵の動向を急がせてしまった…)
後悔を顔に刻むキイの隣から、果敢に跳躍したマリが、腕から光球を大型のジャマに向けて
放つ。爆発に包まれた怪物だが、その爆炎を突き破り、強大な腕が空中のマリを叩き落とす。
地面に激突した彼女が苦痛に顔を歪める。本来なら即死レベル…人造人間の彼女だから
耐える事の出来るレベルだ。
そのまま怪物が巨体を全身させ、マリの体を踏みつぶそうとする。
「いけない!」
叫ぶが、キイには何も出来ない。介入支援員に出来る事は限りがある。結界は形成できても
戦えない。だからこそ、彼女達を頼るのだ。
マリが倒れたまま右手を翳し、連続して光球を放つ。いくつもの爆発が起こり、怪物が
怯んでいく。そこで気づく。
「爆発の数が多い?」
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