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“軍曹(ぐんそう)”は“最強”の兵士である。数多の戦場であらゆる武装や人知を
超えた敵と戦い、その全てに勝利してきた。独自編制の傭兵部隊を率いた、
彼の次の任務地は極東の島国。そこに住む、これまた“最強”の敵を倒せとの
しごく簡単なモノだ。
指定された町に部隊を移動させた彼は部下を使い、情報を集めさせた。
そうして具体的になってきた情報を整理すると…
何でも、この町では最近、明らか人間ではない“異形のモノ”が闊歩するようだ。
しかし、そんな明らか、人に危害を加えるような見た目の奴等を“倒す者”がいるらしい。
軍曹の直感はよく当たる。目標は“そいつ”だ。早速、信頼のおける部下とご自慢の装備を
身に着けた彼は、部下が突き止めた敵の所在地に向かう。
時間帯はお昼。今や、人口減で人通りが絶えた、この国では、武装した彼等が自由に闊歩する許可を与えてくれる。目標の居る建物とは、反対の公営団地の屋上に陣取った軍曹達は
手持ちの突撃銃に装着された高性能スコープで、相手を探す。事前に仲間が設置した
振動センサーと盗聴器で音を拾うのも忘れていない。
最初の驚きは建物が学校だったという事。給食が終わり、教室から飛び出す子供達の
姿を見て、軍曹は顔をしかめる。
(厄介だな…そもそも、目標は子供という事か?)
子供と戦った経験がないわけではない。彼が戦った紛争地域では少年兵が多くいた。しかし、
それでも罪悪感は残る。いや、正直に言おう。
「嫌だ!」
依頼を取り消すべきか?しかし、前金は貰っているぞ?どうする?
考えを巡らす軍曹に、別の場所から建物を見張る部下から通信が入った。
「こちらパージ5、軍曹、まもなく目標が教室から出てきます。1階の教室番号4です。
見ていて下さい。」
「了解…」
迷いつつもスコープを再度調整し、目標を捉える事に成功する。レンズに映ったのは、
真っ赤に目をウルウルさせ、隣の少女に寄り掛かった、およそ“最強”とは程遠い可愛らしい少女の姿をだ。
「キイ殿ぉ~、吾輩の上履き、また片方盗まれたのだぁ~」
「マリさん、落ち着いて。そして私は、鍵子(かぎこ)ここでの名前は
錠前 鍵子(じょうまえ かぎこ)ですから!設定大事です!」
「うう~んっ(鍵子が出したハンカチで鼻をかみ始めるマリ)」
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