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とりあえず、スコープから離して、軍曹は目元を抑える。周りの部下が驚いた感じで
こちらの様子を窺う。念のため、確認の連絡を入れる。
「パージ5、再度の確認だが、あれが目標か?」
「ヤーッ(了解の意)彼女の名前は天津 マリ。我々の依頼主が放った刺客を素手に5回も
迎撃した強者です。」
「どうみても…“幸薄だけど!何とかしてあげたい!可愛いっ子”にしか
見えないんだけど…」
「ヤーッ、それについてはポイント2F奥倉庫前を確認です。」
部下の声に再度スコープを覗き込み、視点を移動させる。3人組の女生徒が固まり、
恐らくマリの上履きだと思われるモノを頭に乗せたり、匂いをスンスン嗅いでいる。
大体の察しはついだけど、とりあえず耳元のイヤホンを操作し、盗聴器の音声を拾う。
聞こえてきたのは、はしゃぐ女の子達の嬌声だ。
「ハァハァ!この匂い!たまらんわん!!」
「見て!見て!!私なんか、こうやって、頭に乗せたら疑似“キャァーッ、マリさんに
踏まれてるぅ~”を体感できるよ!!」
「それ最高!でも、抜け駆け禁止だよ!!マリさんファンクラブ淑女協定は
絶対だからね!」
「それ言ったら、最近、転校してきた鍵子さん!あの子ちょっと距離近くない?
マリさんも慕ってるみたいだし~」
「よし、今日の放課後!殺るか!」
「オウッ!」
最後ら辺の、どす黒い感じの会話辺りで通信を切り、そのまま部下を呼び出す。
「オイッ、てめっ、これは、どーゆうこった?女子のドロドロした昼下がりなんて
見たくねぇんだよ。」
「軍曹!それは違います。これは目標がどれだけ周りに慕われているか?崇拝されているか、最強なのか!を察するいい例でして…」
「何処が最強だ!意味が違うだろ!馬鹿野郎!!俺は帰るぞ。こんな任務はやってられん。」
「軍曹!」
怒る彼の隣で、待機する部下から声がかかる。振り向き、彼の指さす方向にスコープを合わせると同時に、全身が凍り付く。いつの間にか、こちらに視線を固定したマリと鍵子がいた。
そして目標であるマリの右手は銀色に輝き、光を発している。あの光は
決して癒しをくれるモノではない。あれは…
「ハッ、なるほど理解したよ。確かに最強だわ」
苦笑いと共に呟く軍曹達を巨大な光球が包み、大空に向けて、吹っ飛ばして
いった…
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