意外

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曰く、僕がフられてからの様子を見ていたのだという。彼は遊園地に並々ならぬ思い入れがあるらしく、園内で困っている人を見かけると手助けせざるを得ないのだとか。恐らく、チャックが壊れているのは着ぐるみの限界を超えた動きで、ことの解決に当たり続けてきたためだろう。 園内でのバイク使用を他のスタッフから咎められそうになり、急発進。また反省文か、とぼやく彼だが、どうやら口にするつもりはなかったらしい。気まずい思いをしてらしたらごめんなさい、と断ってから、彼は続けた。でも、やりがいがある職場なんです。意外かもしれませんが、私はあの遊園地のどのアトラクションよりも人気なんですよ、と。 僕は「意外じゃないさ」とだけ返した。あのお人好しとの付き合いはその時から始まったのだった。 そんな話をどうして母さんの葬式でするのかって?それはそうだろう、「彼」がお前を産んだのだから。 ーー強い、女(ヒト)だった。 『意外』
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