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暑い、重い、苦しい。
それもそのはずだ。目覚めた瞬間私の目に飛び込んできたのは、まるで重しのように私のお腹の上に置かれた、腕だった。
「ぎゃっ!」
B級ホラー映画のような展開に一瞬変な声が出たが、なんてことはない、その腕の主は私を抱き抱えるようにして眠る、たろちゃんだった。
──なぁんだ。
そう感じたのもつかの間、「いやいや、『なぁんだ』じゃないだろ」ともう一人の私が頭を叩く。
すやすやと無防備な寝顔を見せる彼はとてもセクシーで、密着しているという現実がまたもや体を沸騰させた。
「お、き、な、さいっ!」
自身の体からたろちゃんをひっぺがすと、彼の体を包む布団を取り去ってやった。
「……んん……なぁに……千春さん……朝から元気だね……」
たろちゃんは瞼をこすりながら、まだ眠い目をゆっくり開けた。血圧を上げさせた当人が何を言うか。
「なぁに、じゃないよ! なんでベッドに来てるの! 昨日決めたじゃない、たろちゃんはソファだって!」
そう、昨日たしかに決めたはずだ。一つしかないベッドで共に寝る訳にはいかないから、たろちゃんはソファで寝る、と。そしてその通り、昨夜は別々に寝たはずだ。なのになぜ?
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