元彼というやつ

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「『俺も好きだった』って」  馬鹿みたいな回り道をしたなと思うけど、それでも嬉しかった。好きな人が自分を好きだなんて、奇跡みたいだった。 「ヒュー! それで付き合ったんだ」 「うん、でも──」  三年。三年で私たちは終わりを迎えた。奇跡を大切にしなかったバチが当たったんだと思う。あっけなくて、寂しい終わり方だった。  私はあの日から、ずっと何かを抱えている。蓮見と別れてから、周りも呆れるくらいたくさん合コンに参加した。いいなと思う人が全くいなかったわけではない。デートだって何回かした。けれども、そこから本格的な『お付き合い』に発展する人は一人もいなかった。  そうこうしている内に、気づいたら二十九になっていた。  まだ蓮見を好きなのかと聞かれると、首を横に振る自信がある。そういうのじゃないんだ。私たちは、あの日あの時に終わったんだから。  続きを口にしない私を見て、たろちゃんは何を思ったのか、おもむろに立ち上がった。マグカップに何かを注ぐ音がする。 「はい、これ、コーヒー。……インスタントだけど」
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