3554人が本棚に入れています
本棚に追加
/519ページ
「『俺も好きだった』って」
馬鹿みたいな回り道をしたなと思うけど、それでも嬉しかった。好きな人が自分を好きだなんて、奇跡みたいだった。
「ヒュー! それで付き合ったんだ」
「うん、でも──」
三年。三年で私たちは終わりを迎えた。奇跡を大切にしなかったバチが当たったんだと思う。あっけなくて、寂しい終わり方だった。
私はあの日から、ずっと何かを抱えている。蓮見と別れてから、周りも呆れるくらいたくさん合コンに参加した。いいなと思う人が全くいなかったわけではない。デートだって何回かした。けれども、そこから本格的な『お付き合い』に発展する人は一人もいなかった。
そうこうしている内に、気づいたら二十九になっていた。
まだ蓮見を好きなのかと聞かれると、首を横に振る自信がある。そういうのじゃないんだ。私たちは、あの日あの時に終わったんだから。
続きを口にしない私を見て、たろちゃんは何を思ったのか、おもむろに立ち上がった。マグカップに何かを注ぐ音がする。
「はい、これ、コーヒー。……インスタントだけど」
最初のコメントを投稿しよう!