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しゃく、しゃく、しゃく。
氷屋でひんやり冷たいかき氷を美味そうに食べているのは、まさかの太陽だった。
しかもよく見たら、シロップを大胆に、いちご、レモン、メロンにブルーハワイと、色あざやかを通り越して混ざったら残念そうな色合いになりそうなふうにぶちまけている。
あれ、食べた時の舌の色はいったいどうなるんだろうとこっちが疑問に思うレベルだ。
しかし太陽はそんなこともいっこう気にせず、一心不乱に食べている。
ちなみに今は深夜のはずなのだが、太陽がここにいるせいでへんに明るいのである。ついでに言えばひどく暑くもある。
店の主人は汗をだらだら掻きながら、
――年に一度だけ、ここいらに来るんですよねぇ、太陽。
そんなことを言いながらまた氷を丁寧に削っていた。
太陽はおかわりを毎回所望するらしい。そんなに毎年来ているとは知らなかったから、こちらも驚いてばかりなのだけれど。
どうやらこの太陽、この店の常連だったらしい。それだけでもとんでもないことではあるのだけれど。
しゃく、しゃく、しゃく。
やがて太陽はひととおり食べ終えたらしく、にこっと笑ってぴょいと東の空に駆けていった。時間を見ればもう夜明け前。
やがていつものように太陽が東の空から顔を出す――が。
その光は、かき氷の影響だろうか。いつもに増して鮮やかに、そして熱さは僅かに鳴りを潜めているように感じられた。
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