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 透き通った青空はどこか哀し気で、太陽はだるそうに僕を照り付ける。その光で僕の太陽より気怠い一日が始まる。顏を洗い、遅い朝食を摂り、歯を磨き、トイレに籠る。蒸し暑く、異様な臭いのするのを我慢しながら用を足す。それが終わると、着替えて家を出る。向かう先は予備校。午後の授業までは自習室で自習。 こんな生活をもう40日も続けている。だが、飽きない。・・・というのはウソで、実際は飽きてはいけないのだ。飽きてしまえば、もうそこまで。ただただ広がった空虚な夏休みを前に、することもなく、ただ茫然としているだけ。そこから生まれる憂鬱は、無性に死への欲をかきたてる。だが同時にものすごく不安で、恐ろしくなる。この間まで漠然としていたそれは、現実味を帯びて近づいてきている。だから、受験勉強にしか逃げることができず、ただ机に向かっているのだ。他のことについて考えることもあるが、何も考えない、あるいは思わないというのは許されない。ひたすら勉強に集中する。かといって、成績が上がるかと言えば、それもまた違う。自分がしていることが時間の無駄だと考えると、余計に死にたくなる。  蝉の大合唱を聞きながら、今日は塾が閉まっていることに気づいた僕は、心の中にぽっかりと空いた空洞を埋めることができず、テレビをつける。もちろん、台風のニュースで心の穴は埋まらない。僕は本棚に置いてあった聖書を開いた。  ――ですから、すべて他人をさばく人よ。あなたに弁解の余地はありません。あなたは、他人をさばくことによって、自分自身を罪に定めています。さばくあなたが、それと同じことを行っているからです。  私たちは、そのようなことを行っている人々に下る神のさばきが正しいことを知っています。――  カトリック系の私立高校に通っていた姉は地方の国立大学に行った。部屋の汚さは一級品で、旧約聖書やセンター試験の過去問、彼氏からもらったプレゼントなどが紛失する中、新約聖書は奇跡的に生き残り、今ではリビングの本棚に大事にしまい込んである。姉がいなくなった部屋は今でも、恐ろしい散らかり方をしている。
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