ミルキーロード

1/1
前へ
/2ページ
次へ

ミルキーロード

 夕方になっても沈むことを知らない夏の太陽が教室内を照らし、6限目が終わった。 「勇星、一緒に帰ろうぜ。ついでにゲーセンでもどうだ?」 教室の一番後ろ、窓側の席まで拓也が声をかけに来てくれた。 「ごめん、生徒会の用事があるから先に帰って」 「そっかーお疲れ、じゃあまた明日会おうなー」 リュックサックを背負い直すと拓也は教室の出口に向かいがてらに他の男子に声をかけ、一緒に帰って行った。  拓也は高校に入学した初日、最初のホームルームの後に真っ先に話しかけてきてくれた。明るく元気でクラスのムードメーカーとなっている。  下校の放送が流れ、さっきまで騒がしかった校舎が一気に静まりかえり遠くの校舎から吹奏楽部が演奏する音、校庭から陸上部の足音、体育館からバレー班の声が聞こえる。教室に残るのは勇星ただ一人となった。 「勇星、ねぇ勇星。お腹が空いた、お菓子をちょうだい」 どことなく静かな落ち着いた声が聞こえる。  俺が友人からの誘いを嘘をついてまで断り、最後の一人になるまで夏の教室に残るはめになったのはこいつが原因だ。当の本人は俺の気持ちも知らずに購買で買っておいてやったメロンパンをおいしそうに頬張り、机の上に座って真夏の太陽の光を輝く金色の髪で跳ね返している。 「それで天音、今回は誰?」 のんきに口の周りについた食べかすを一つ一つとっては口に運んでいる姿に軽くいらつきながらも本題へと移った。 「弓道部の江ノ宮 沙希って人」 「星は?」 「射手座デルタ星、カウス・メディア。射手座の弓の中央の星で三等星」 「了解、とりあえず弓道部に行ってみようか」 そう言い席を立ち、弓道部のが練習している南校舎裏へと向かった。 「パンッ」 という音と共に矢が放たれ刹那の間をおいて的を射貫く。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加