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一人暮らしを始めて初めて買ってもらえたベッドが徐に軋む。満たされているようでいて、満たされてないのを日々ごまかしてる自覚はあるにはある。
が、そんなの全部どうでも良くなる瞬間はすぐそこで待っている。
今日も言えそうにない。まあいっか。枕元をまさぐってエアコンのリモコンに手をかける。ピピというスイッチ音を合図に彼がかぶさってきた。私は理生しか知らない。けれどおおよその順序とか癖とか覚えてしまって、一連の儀式は滑らかに滑らかに進んでいく。
「いい?」
「ん…」
「だったらどうして辛そうな顔する?」
ツライ? 付き合って初めてこんなこと言われて軽く動揺している。いつからそんな顔をしてたのかしら、辛いつもりは一度もないのに。
それに最中の自分の表情なんて、気に留めたことすらなかったのだ。
「俺、悪いことしてるみたいじゃん」
私は首を横に振る。ツラクナイ。その厚みのある大きな手に委ねてさえいれば、なのに酩酊しつつある皮膚感覚をそっちのけにしてまで、ぐるぐる巡り始める。どうする? どうしたい?
「いいって顔、してよ」
もしや理生もタイムループな日常に疑問し始めたのだろうか。いい? 気持ちいい顔をすればいい? それってどんな? 彼の期待する顔…?
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