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彼らは中学生の頃からのつきあいだった。
斎藤美以子と佐伯周と佐藤強士――名字がサ行であったために彼らは近くの席に座らされることになった。ただそれだけのことだったけれど、彼らはそれからずっと友人として過ごすことになった。
名字がサ行であること以外に彼らにはあまり共通点がなかった。
周はその頃から背が高く性格も快活ですぐにクラスの人気者になった。強士は背が低く口数も少なく、いつもなにかしらの本を読んでいた。美以子はおとなしい性格だったものの二人によく注意した。
「周くん、ちょっと浮かれすぎ」とか、
「強士くん、もうちょっと楽しそうにできないの?」とだ。
その美以子はほっそりとしていて、同級生の女子の中では突出して背が高かった。手脚もすらりと伸び、肌の色は透きとおるように白い。
ただ、周や強士に注意するときには頬が赤く染まった。彼女は三人でいるときにだけ過剰であったり過少である周や強士をたしなめた。しかし、普段の美以子はその容姿が目立つものであるにもかかわらず、あるいはそうであったためにひっそりと目立たぬようにしていた。
強士も周もそのことには気づいていた。放っておくと自分たちの知らぬ間に美以子は消えてなくなってしまうのではないか――二人ともそう思うことがあった。
もちろん、それは半分以上ほど冗談のようなものだった。
彼らはまだ充分すぎるほど幼く、それこそ過剰に物事を捉えるという癖を持っていたのだ。
美以子にたいして思うことは自分についても同様に感じることだった。なにかのきっかけで自らが著しく変化をし、果てには存在を消してしまうかもしれない。
強士も周もそのような怖れを持つことがあった。怖れがあるぶん、彼らはそれを冗談に包みこみ直視しないようにしていたのだ。ひとりでいると怖れは彼らをとらえた。だから、誰かにそばにいて欲しかった。
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