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トイレの個室事情
――思うに、トイレの個室というものは、きちんとした密室であるべきではないでしょうか?
便座を囲う壁は薄くて上下はスカスカ。
どうしてこんなにも開放感に溢れているのか……これでは音や臭いが漏れてしまうじゃありませんか。
入口付近では私と同年代の女子ふたりが会話を楽しんでいます。
彼女らまでの距離は10メートル程。排泄音を隠しきるには不十分です。
上手くおしゃべりの最中に済ますことが出来れば気づかれずに済むでしょう。
ですが、失敗すれば恥ずかしさのあまり、泡になって消えてしまうにちがいありません。
願わくば速やかにこの場から遠ざかって欲しいもの……そうでなくとも、図書館で長話などマナー違反です。
私の願望は現実にならず、活発化した腹部の要求に泣く泣く屈することになります。
己の尊厳を守る為、可能なかぎり音量を絞る挑戦をします。
幸いにもソレは成功の兆しをみせてくれました。
わずかな音を奏でるだけで溜まった気体が体内より放出。これなら気付かれずに済むでしょう。
しかし、安堵したのもつかの間、すぐに次のトラブルに見舞われます。
なんと腸内の巨頭までもが動き始めたのです。
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