将軍家の犬

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「うっ、うるせぇよ、ばっきゃろうめ…」 惣兵衛は図星とばかりに、下を向いてしまいます。 呆れた様子の弥太郎が口火を切ります。 「ったく…、しょうがねぇ野郎だな、お前さんはよ…、仕方ねぇ、おいらも一つ協力してやるよ…」 惣兵衛は弥太郎の意外な申し出に、少し驚きます。 「えっ、そうかい…、そいつは助かるなぁ…」 「だかな、ただで助けるってわけにゃあいかねえよ…、事が上手く運んだ暁にゃあ、手にした金は折半にしようじゃあねぇか…」 「せっ、折半かよ…、人の足元見やがって、こんちくしょうめ…」 弥太郎は自信満々のしたり顔です。 惣兵衛は観念しました。 「分かったよ、こんちくしょう…、 折半にらしてやらぁな…」 「よぉし…、よく決心した…、 てめぇ、二言をのこすんじゃあねえぞ…」 二人の契約は成立した模様です。 「それで…、これからどうしたら良いんだよ? そこまで言うからにゃあ、とっておきの秘策があるんだろうな?」 惣兵衛は相棒に問いかけます。 「えっ、おっ、おめぇ…、そんないきなり聞いてくんのかよ…」 今度は弥太郎がしどろもどろになります。 「あー!、さてはテメェ…、 テメェだって、何も考えてねぇんじゃあねえかよ、 こんにゃろめ!…」 「まっ、まぁまぁ落ち着けよ、惣吉よぉ…、 俺がなぁ、これからな…、とっておきの知恵を貸してやるからよ」 「おぅよ…、 それじゃあ言って貰おうじゃあねえかよ…、 お前さんのとっておきの知恵ってやつをよぉ…」 「おぅさ…、まっ、まずだな…、 オメエがさっきからボケーっとしながら、見つめてるあのお犬様をだな…、とっ、とっ捕まえてみろぃ…、話はそれからだょ、出来んのかよ、こんちくしょうめ…」 若干心持ちの不安そうな弥太郎が口火を切りました。 「なっ、何言ってやがる、こっ、こんにゃろぅめ…、お犬様の一匹や二匹捕まえるなんてなぁ…、 朝飯前だってんだよ、てやんでぇ…」 惣兵衛は啖呵を切りながら、目の先におられるお犬様を見つめます。 「グルゥ…、ヴウゥ…ヴゥ…」 お犬様は、まるで二人の話を聞いていたかの様に威嚇しています。 「あらまぁ…、 そこにおられるお犬様は、どうやら今はご機嫌斜めらしいな…、 惣吉よぉ、無事に朝飯を食えるといいなぁ…」 弥太郎はにやにやしながら、惣兵衛を挑発しております。
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