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女の子からまともに褒め言葉を受けて、晴海は小鼻を膨らませたわけだけれど、今から考えると恥ずかしいばかりだった。
「梅の華やかさとは真逆の世界ですね」
彼女が静かに言った。
竹林を右手にして歩いて行き道を折れる。梅林から離れる方向へと坂を下って行く。途中、向こうから歩いてきたカップルを避けるために、ちょっと少女の方へと身を寄せると、花のような香りがした。本当に梅の精なのではないかと疑ってみる心がまだある。どこかでウグイスが鳴いた。
スロープになったところを降りて行くと、徐々に視界が開けてくる。その明るさから引っ込むようなところに、
「吐玉泉」
という泉があった。
水は綺麗だけれど、肌寒いので、手をひたしてみる気にはなれない。
さらに下へと降りて行くと、小川が流れていて、カモが二羽ちょこちょこと歩いて行く姿が見えた。
短い橋を渡ると全天が開けて、正面にJR常磐線が見える。ちょうど、列車が音を立てて走り去った。さらに、池になったようなところを越えて行き、常磐線のレールに近づいていくと、左に道を取る。土産物を売っているスペースがあって、
「お土産にいかがですか」
少女が言うので、晴海は、手を振って断った。
JR常磐線をおおまたで越えるようにかかっている橋があって、
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