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「梅桜橋」
という名前がついているらしい。ここを越えて行ったところに、千波湖という湖があり、少女によると、
「向こうの方がもっと咲いていると思います」
ということである。晴海は心引かれたけれども、さすがに向こうまで行っていると、向かえに来た姉を待たせることになるのではなかろうかと思い、そこで、自分のことばかりで彼女のことに考えを巡らせていないことを恥ずかしく思った。しかし、尋ねてみると、
「わたしは大丈夫です。昨日見て来たから」
そう答えられた。
常磐線を、右手にして歩くと、小ぶりな門に至る
「ここが南門です」
少女が言う。
晴海が入ってきたのは、東門らしい。
小さな虫を払いながら門をくぐると、小道が斜めに切り上がっている。
常磐線を見下ろしながら登って行くと、斜面に、梅の木がある。
「崖急に梅ことごとく斜めなり」
句碑があって、どうやら正岡子規が詠んだものらしい。俳句の心得がない晴海には、その句の良さはよく分からないけれど、句碑の隣にある立て札には、人生にも通じると書いてある。
「曲解じゃないかなと思います」
少女は、はっきりと言い切った。
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