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「先に意味を求めて読んでしまっているから、そういう風に取ってしまうんですね」
一家言あるのか、そう続けて言うと、しかし、言いすぎたことを恥じるかのように、唇をきゅっと引き結んだ。
細い坂道を登って行くと、また小さな門があって、梅林の元へと帰って来たようである。
「ここが好文亭です」
近くに、木造三階建ての建物がある。
「有料ですが、見ていきますか?」
仮に見るとしたら、一人でということになるだろう。彼女は土地の人だから見たことはあるだろうし、自腹を切って見る気にはならないだろう。かといって、こちらがお金を払うでは、もっと変な話になる。
「いや、いいよ」
好文亭から、梅林に背を向ける格好で歩くと、千波湖を遠望できる見晴らし台へと至る。
今、春雨にぼおっとかすむ湖を見ながら、晴海は偕楽園を一周して来た感慨にふけった。
ここから再び梅林へと向かったところで、彼女と別れたのだった。別れる時に、
「来年また会ってくれないかな」
と、晴海は言った。
なぜそんなことを言ったのか。
ただまた会って欲しいというだけではなく、なぜ1年もの時間が必要だったのか。
晴海には分かった気がした。
この1年の間に、晴海は、二度女の子から告白を受けた。
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