2人が本棚に入れています
本棚に追加
一度は、晴海が振られた例の子からである。好きな子と思いを遂げたらしいが、上手く行かなかったということだ。その子から、良かったら、と言われたときに、しかし、晴海の胸は全く騒がなかった。
もう一人は、この1年でよく話すようになった子で、少し前に告白されたばかりである。この子からの告白には、心が揺れた。しかし、揺れるだけであるということが、断らないといけないというそのことを表していた。
――でも、なんで……。
なんでだろうか。
名も知らぬ彼女への義理立て、そういうことなのだろうか。
別に何を誓ったわけでもないのに。
しかし、
「来年ですね。分かりました」
会う約束はしてくれたのだった。
「わたし、今日は1年間、この園にお別れするために来たんです」
「え?」
「高校受験だから」
ということは、彼女は一歳年下ということになる。その大人びたたたずまいから、年上だろうと思っていた晴海は驚いたが、内心を外には表さなかった。
「ここにはしょっちゅう来ていて、つい長居しちゃうから。受験に本腰を入れるために、合格まで来ないようにしようかなって」
微笑みながら続ける彼女に、晴海は、申し訳ない気持ちになった。そんな大事なときに、失恋男のなぐさめ役をさせてしまうとは。そう、なぐさめ役。自分でもゲンキンだと思うけれど、晴海の気持ちは彼女と園を一周する間に、すっかりと改まっていた。
最初のコメントを投稿しよう!